山下清とその仲間たちの作品展

八幡学園は昭和3年(1928)、久保寺保久が自宅(千葉県市川市)を解放し日本で8番目の知的障害児救護施設として開園しました。学園標語「踏むな 育てよ 水そそげ」をモットーに、今年創立88年を迎えています。学園長はじめ職員は入園してくる子どもたちを父母、兄姉として迎え、学園生活での喜びと心の安定を求めるために、一人ひとりの特性を見出し、その子にあった作業(絵画、工作、園芸、縫製等)を与え、心の触れ合いを通して園児たちの特性を高めていきました。
昭和11年(1936)、早稲田大学心理学教室・戸川行男助手(後に名誉教授)は、八幡学園に障害を持ちながらも絵に特異な才能を持つ園児がいることを知り“特異児童の心理学的特性とその成果”について研究するため八幡学園を訪ねました。2年後の昭和13年(1938)、その研究成果を早稲田大学大隅講堂で「特異児童作品展」と題して発表、八幡学園の指導理念や園児たちの作品は画家・安井曽太郎、梅原龍三郎らから高く評価され、社会の関心を集めました。
山下清をはじめ仲間たちの作品においては「美」に対するたぐいまれなる「天性」を感じさせます。その才能を開花させ、なおかつ、自発的に工夫するようになるまで指導した指導理念「踏むな 育てよ 水そそげ」は現代の教育のあり方に一石を投ずるものがあるのではないかと思います。
60数年もの長い眠りの中にあった仲間たちの作品は、今も色鮮やかに私たちの目を楽しませてくれています。八幡学園では戸川行男の研究成果をもう一度紹介するため「特異児童作品展」を「山下清とその仲間たちの作品展」と改題、公開することになりました。貼絵の天才・山下清、原始芸術の風格を持った・沼祐一、クレパス画の異才・石川謙二、幼くして絵画的天分を発揮した・野田重博。障害があっても造形美術的能力が如何なく発揮されている「山下清とその仲間たちの作品展」をぜひご観覧ください。

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