小海町高原美術館では、コレクションより谷本清光(1936~)、弦田英太郎(1920~2014)、油井正次(1908~1998)を紹介します。
谷本清光は、1936年東京に生まれ、62年東京学芸大学美術科を卒業、88年小海町に「ギャラリー阿登久良」を開設しました。57年日彫展(東京都美術館)出品から東京を中心に数々の個展、グループ展を開催し、89年からは小海町でも発表を続けています。星座を主題とした作品を描き続けている稀有な画家谷本清光は、「自然への畏敬の念 いのち育むみどり 世界の平和」を作品に込めていると語ります。美しい星空を望む豊かな自然に囲まれた小海町のアトリエで描かれる、丹念に塗り込められた深い宇宙空間に輝く星は、私たちに地球環境を再考する拡張した視野を与えてくれます。
弦田英太郎は、1920年東京に生まれ、42年東京美術学校(現・東京芸術大学)油絵科を卒業しました。藤島武二、ホドラーの弟子でスイス人のコンラッド・メイリ、有島生馬に師事し、48年一水会会員に推挙、50年日展特選、92年には、日展審査員となり、99年当館で「弦田英太郎展-京舞妓-」を開催しました。弦田は40年以上に渡って日本の伝統美の象徴、舞妓をモチーフとした油彩に取り組みました。日本画に多く見られる舞妓のモチーフを油彩画の技法を用い卓抜した描写力で光や重量感そして、きらめくような生命の発散を表現しています。
油井正次は、1908年小海町に生まれ、家業の染物店を継ぐ傍ら、油彩そして、木版画に取り組みました。主に佐久地方に取材し、根を張って生きている力強い農民の姿や、反核、ダム反対闘争など、時代に生きた人々の姿を平和への願いとともに描いています。日本アンデパンダン展に連続22回出品し発表をしています。平和への強烈なメッセージは、緻密に計画された白黒の木版画に表れ、多色刷木版画は油井が愛した郷土の風景を奥深く表現しています。
本展を通じ3名の作家の輝ける生命へのまなざしを感じていただけたら幸いです。